マギーティーラ ~蔵元見学編~ 7月9日
2013年 07月 09日
間が悪いというか、よりによって、というハプニングは
旅のエッセンスでもある。が、臨時休館とは!
ただ、24時間有効のゆいレールフリー乗車券を
前日に購入していたので、時間もあるし、と訪れた
だけなので、がっかりすることはなかった。
しかし、他に具体的なプランなく・・。と、駅で見つけた
「琉球泡盛の里を訪ねる旅」のリーフレット。
フリー乗車券を使って酒造所をまわり、4つの
スタンプを集めて、オリジナルのお猪口を貰おう、
という企画。
駅から一番近い、徒歩5分の『咲元酒造』。
スタンプもらって、ちょっと試飲させてもらって・・と
思っていたのだが、さらに工場見学まで!
ちょうど作業の手が空いた時間らしく、私一人の
ために、杜氏の社長さん自ら案内してくださった。
工場で大量生産はせず、由緒ある泡盛造りを
100年以上継承されている。
咲元酒造では、タイから輸入した原料のタイ米を、
沖縄県内で砕いたものを使用。
巨大なドラムに水と900㎏の米を浸し、撹拌し、
黒麹を混ぜ、蒸す。
工場であれば、コンピュータで自動コントロール
されるこれらの工程、ここでは全て杜氏の経験と、
それに基づいた勘で微調整される。
季節、天候、気温や湿度、工場の中でも、風通しの
具合・・・・、刻々と変化する環境に応じて、見た目、
におい、手触り、体感温度、音、五感をフル稼働して
判断されるという。
ドラムから出し、均一にならして広げ、24時間置いて
黒麹を浸透させる。それを竹かごで担いで運び、
水と米を大きなステンレスタンクに投入して、
20日ほど熟成させる。
ビニールの覆いをあけると、麹の働きで発熱した
ぬくい香りが立ち上る。タンクの中に管を通し、
井戸水を循環させ、温度調整するという。
黒麹には、あらゆる雑菌に負けないパワーがあり
空気中に漂う何物にも侵されることはない。
冬だけの日本酒と違い、雑菌が繁殖しやすい
真夏でも、泡盛を造ることができるのは、そのため。
また、発するクエン酸は、もろみ酢の原料でもあり、
杜氏たちは整腸作用が菌を豊富に含む、この
熟成途中の灰色の米を食べることもあるという。
戦争中、この酒造所あたりも焼け野原に。
避難先から帰った二代目社長(現役は退かれているが
90歳を過ぎてなお大層お元気で、車の運転も
されるらしい!)が見つけたのが、戦火を奇跡的に
逃れた一本の木。これは、この社長が生まれた時に
植えられたもの。
この木を目安にして、母屋のあった場所に目星をつけ、
掘り起こし、これまた奇跡的に麻の袋に入った黒麹を
探し出したという。
これをもとに、泡盛造りを復興させ、今に至っている。
(その黒麹は、独り占めせず、近隣の酒造所に
配り、泡盛の復興をすすめた。)
数ヶ月の熟成後、蒸留させて完成。
この時濾過せずに、良質の油が浮いたままを瓶に
詰め、3年ほど置くとまろやかな古酒(クース)に
なるという。
(濾過して油を取り除いたものは、年数が経過しても
ほとんど味は変わらず、古酒にはならない)
そして驚くことに、雑菌に強い黒麹菌の働きは
衰えることなく継続するため、時折空気に触れさせ、
混ぜながら置くと、何百年、何千年と、腐敗しない。
ツウにはたまらない、地道に製法を守りつつ
大事に造られる泡盛が、ここにある。
米が原料なのに、フルーティーな、ワインのような
香りがするものも。
思いのほか長居し、半日を過ごしてしまったので、
よそには回らず。でも首里城より有意義だったかも。
by ca0lizm
| 2013-07-09 05:10
| たび(うちなー)
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