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まーちゃん  1月14日

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ところどころに添えられた撮影日や場所は、彼の
祖母の手書きの文字。
まーちゃんの古いアルバムは、どれもとてもうれしそうな
無垢な笑顔で溢れている。
20年余りの年月がたったの1冊で収まるほど、枚数は
とても少ないけれど。

さぞ幸せに愛されて成長したのだろうと誰も疑うことは
ない色あせたスナップ写真に、もちろん嘘はない。
彼曰く、写真に残らないありきたりの毎日があまりにも
辛すぎて、カメラを向けられるささいな行事ごとが
嬉しくて幸せで、その素直な気持ちの表れなのだという。

物心つくかつかないかの頃、家にいたくなくて、遠く遠く
ひたすら漕いだ自転車。夕餉の時間、お母さんに呼ばれて
帰ってゆく友だちを見送る切なさ。お下がりの晴れ着。
どこにもいけなかった。どこにもいたくなかった。

未熟な大人達の、身勝手で残酷な事情に巻き込まれた人生。
けれど、心から見守り、支えてくれた友だちや先生が
いつもたくさんそばにいて、頑張る彼にエールを送り続けた。

大人になった彼に、降って湧いたように妹ができた。
両親揃って育った彼女のアルバムには、笑顔の写真は
ないらしい。幸せの意味すら未だに掴めぬまま。

ふりかけも好きなだけかければいいよ。ケーキだって
アイスクリームだっておなかいっぱいになるほど
買ってあげたい。そして笑顔だけじゃない写真を
たくさん撮って、新しいアルバムを思い出で
満たしてあげたい。まるごと抱きしめてあげたいと
妹は思う。

・・ほんとは彼女自身が、そうされたいのだろうか・・

彼には既に自ら築いた家庭があり、誰よりも幸せな
日々を送っている。幸せになりたい気持ちが、周りをも
幸せにしてゆく。それは生い立ちも境遇もひっくるめて
彼が自らの力で手に入れ守る、輝く宝物。
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by ca0lizm | 2010-01-14 06:50 | 無機物 | Comments(0)

 心の琴線に触れるもの


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