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ぶんせいどう  5月21日  6:16

「文静堂」という名の大きな看板を掲げる書店。
それは戦前、神戸市須磨区にあった。
戦争で主を失い、一家は北区に移り、看板だけは
しばらくは残っていたそうだが、今はもうない。

主はその大きな書店のひとり息子で、大正時代に
現在の関西学院大学を出た、当時ではエリートで
お坊ちゃんだったという。

その書店の番頭を務めていた人が始めた書店が
別の名前で今も三宮にあるらしいが、詳細は知れない。

世が世であれば、名の通る書店として拓け、
チェーン展開していれば、戦争当時は幼かった
息子たちの手によって、老舗の看板が脈々と
生き続けていたかもしれない。

次男のわしも、小っさい古本屋の親父くらいには
なれてたかもしれんなあ。

---そう語るのは、私の父。
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そう、戦争がなければ。
全てが今とは異なっていただろうし、そもそも
「私」という人間はおそらく、この世に存在しない。

色褪せ、朽ち果てそうな古い書物を見かけるたびに
セピア色の写真でしか知らない祖父を思う。

本好きな遺伝子と、そして年を重ね、いかにも
眼鏡にはたきの似合いそうな父の姿に、深い因縁を
感じたりしている。
by ca0lizm | 2009-05-21 06:16 | ねこ | Comments(0)

 心の琴線に触れるもの


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